事件番号:JP2004-0003 裁 定 申立人: 名称: コンシテックス・エス・アー 住所: スイス国 ツェーハー-6850 メンドリシオ、 ビア・ラベッギオ 16 代理人: 弁理士 清水 徹男 同 醍醐 邦弘 同 大西 育子 登録者: 氏名(名称): Stefano Vescovi 住所 : Hofweg 4, 3013 Bern, Switzerland 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネルは、JPドメイン名紛争処理方針、 JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則及び日本知的財産仲裁センター JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則の補則並びに条理に則り、申立 書・提出された証拠に基づいて審理を遂げた結果、以下のとおり裁定する。 1 裁定主文 登録者はドメイン名「ermenegildozegna.jp」の登録を申立人に移転せよ 2 紛争に係るドメイン名は「ermenegildozegna.jp」である。 3 手続の経緯 別記のとおりである。 4 当事者の主張 a 申立人 申立人は、申立人の登録商標「ERMENEGILDO ZEGNA」を 実質的に模写し、マークにおける申立人の好評を利用する意図をもって登 録者によって採択されたドメイン名を登録していることを主張する。申立 人によれば、ドメイン名は、申立人の商標と混同を引き起こすほどに類似 し、登録者はドメイン名について正当な利益を有していない、そしてドメ イン名は不正の目的で登録され且つ使用されている。 従って、申立人は、ドメイン名登録の申立人への移転を請求する。 b 登録者 登録者は規則5条(a)所定の期間内に答弁書を提出しなかった。 5 争点および事実認定 規則第15条(a)は、パネルが紛争を裁定する際に使用することになっ ている原則についてパネルに次のように指示する。「パネルは、提出された陳 述及び文書の結果に基づき、方針、規則、及び適用されうる関係法規の規定、 原則ならびに条理に従って、裁定を下さなければならない。」 方針第4条aは、申立人が次の事項の各々を証明しなければならないこと を指図している。 (a)登録者のドメイン名が、申立人が権利または正当な利益を有する商 標その他表示と同一または混同を引き起こすほど類似していること (b)登録者が、ドメイン名の登録についての権利又は正当な利益を有し ていないこと (c)登録者のドメイン名が、不正の目的で登録または使用されているこ と a 同一又混同を引き起こすほどの類似性 本件ドメイン名「ermenegildozegna.jp」は、トップレベル・ドメイン である「jp」を除けば、申立人らエルメネジルド・ゼニアグループの著名 な商標であると共に、著名な営業表示でもある「ERMENEGILDO ZEGNA」と、大文字小文字の差異はあるものの、同一の文字構成であ ることから実質的に同一であると言える(甲2~33、34、36~39、 41~45、47~61、63~66、69)。 このため、本件ドメイン名が使用された場合、登録人が申立人らのエル メネジルド・ゼニアグループの者か、或いは密接に関連を有する者である かの如くに誤認を生ずるおそれがあることが認められる。 b 権利又は正当な利益 本件ドメイン名の第二レベルドメインである「ermenegildozegna」は、 登録者Stefano Vescoviの氏名を示すものではない。その上、特許庁のI PDLで調査した結果、登録者が商標「ERMENEGILDO ZEG NA」或いはそれを含む商標を、いずれかの分類において商標登録或いは 商標登録出願している事実は発見されなかった(2004年9月16日現 在)(申立人主張の全趣旨による)。 また、「ermenegildozegna」は、前述のとおりエルメネジルド・ゼニア の創業者の氏名と同一の文字の配列から成るものであり、16文字という 長い文字構成に鑑みると、だれもがドメイン名として採択するようなあり ふれた語であるとは言えない。 更に、登録者は、申立人及びエルメネジルド・ゼニアグループの企業と は一切関係がなく、従って申立人らが登録者に「ERMENEGILDO ZEGNA」の使用を許諾した事実もない(申立人主張の全趣旨による)。 上記次第につき、登録者は本件ドメイン名について何らの権利も正当な 利益も有していないものと認められる。 他方、登録者は本件ドメイン名についての権利又は正当な利益を有して いるということについて、自らその旨立証しない。 c 不正の目的での登録及び使用 「ERMENEGILDO ZEGNA」が、申立人らの創業者の氏名で あり、だれもが採択するようなありふれた語ではないこと、また、本件ド メイン名が登録された2004年3月7日時点において、「ERMENEG ILDO ZEGNA」がエルメネジルド・ゼニアグループの商標及び営 業表示としてヨーロッパ各国、日本及びアメリカ等の広い範囲で著名であ ったことに鑑みると、「ERMENEGILDO ZEGNA」と同一の文 字構成の本件ドメイン名を、申立人と同じスイス国在住の登録者が善意で 採択し登録したとは到底考えられない。従って、登録者は、エルメネジル ド・ゼニアグループの著名な商標及び営業表示であることを認識した上で、 不正の目的を以って本件ドメイン名を登録したものと推測することができ る。 また、本件ドメイン名が登録されたことに気づいた申立人が、2004 年4月1日にイタリアの代理人を通して登録者に警告したところ、同年4 月7日に登録者の代理人であるスイスの弁護士から電話にて、本件ドメイ ン名を7000ユーロ(約98万円)で売却する用意があるとの回答があ ったことが認められる(申立人主張の全趣旨による)。この事実は、本件ド メイン名が不正の目的で登録されたことを裏付けるものである。 6 結論 以上に照らして、紛争処理パネルは、登録者によって登録されたドメイン 名「ermenegildozegna.jp」が申立人の商標と混同を引き起こすほど類似し、 登録者が、ドメイン名について権利又は正当な利益を有していない、登録者 のドメイン名が不正の目的で登録され且つ使用されているものと裁定する。 よって、方針第4条iに従って、ドメイン名「ermenegildozegna.jp」の登 録を申立人に移転するものとし、主文のとおり裁定する。 2004年11月18日 日本知的財産仲裁センター紛争処理パネル 畑 郁夫 単独パネリスト 別記(手続の経過) (1)申立受領日 電子メール 2004年9月22日 書面 2004年9月24日 (2)料金受領日 2004年9月22日 金 180,000円 入金 2004年9月24日 金 9,000円(消費税額)入金 (3)ドメイン名及び登録者の確認日 2004年9月22日 センターの照会(電子メール) 2004年9月22日 JPRSの確認(電子メール) 確認内容 1) 申立書に記載の登録者はドメイン名の登録者であること 2) 登録担当者は本人であること (4)適式性 日本知的財産仲裁センターは、2004年9月27日、申立書が社団法人日本ネ ットワークインフォメーションセンター(JPNIC)のJPドメイン名紛争処理 方針(方針)、JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則(規則)、JPド メイン名紛争処理方針のための補則(補則)の形式要件を充足することを確認 した。 (5)手続開始日 2004年9月28日 手続開始の通知 2004年9月28日 JPNICへ(電子メール) 申立人代理人へ(郵送及び電子メール及びFAX) (6)登録者への通知日及び内容 1)2004年9月28日、センターは、郵送及び電子メールにより登録者に 通知した。郵送に関しては、申立書記載の海外住所へは配達完了したが、JPRS 登録の国内住所へは不達であった。センターは、電子メールに添付した申立通 知書にて、答弁書提出期限が2004年10月27日であることを通知した。 2) 11月4日、11月6日に、登録者よりセンターに英文により手続に関す る問い合わせがあった。2004年11月9日に、登録者の日本語による手続の続 行の意思が不明確であったため、センターは、日本語による手続を行う意思を 2004年11月15日までに通知するよう登録者に求めた。しかしながら、2004 年11月15日までに登録者からの回答はなかった。 (7)答弁書の提出の有無 登録者は答弁書を提出しなかった。 (8)答弁書不提出通知書の登録者への送付日 2004年10月28日 (電子メール) (9)パネリストの選任 単独 パネリストの氏名 畑 郁夫 中立宣言書の受領日 2004年11月1日 (12)紛争処理パネルの指名及び予定裁定日の通知日 2004年10月28日 (電子メール) (13)予定裁定日 2004年11月18日事件番号:JP2004-0003 (14)パネルによる管理 適宜に、電子メール及びFAX・電話等の手段を利用